400年ぶりに発見されたという『対称性多面体』構造について考察してみた

 

Gigazineに2/22に掲載された『400年ぶりに新種の「対称性多面体」構造が発見される』という記事について考察してみた。

サッカーボール構造あるいはC60フラーレン構造ともよばれる構造体を六角形の辺のねじれを許すことで拡張して新しい対称体を発見したというものである。

 

記事中には発見した2つの多面体構造の3Dモデルが掲載されている。ひとつは一見サッカーボール構造のように見えるが、頂点の数が80個で60個であるサッカーボール構造より多い。よく見ると、同一頂点を共有する六角形が3つある頂点が存在することがわかる。正六角形を並べるとハニカム構造となるため、平面になってしまうが、発見したスタン・シェイン博士曰く『、多面体構造の前提条件とされる「面が平面である」という要件を緩和して、完全な平面ではない「ねじれた面構造」を許すことで、新たに対称性を持つ「対称性・準多面体」とでも言うべき立体を考案することに成功した』とのこと。

よく見ると正六角形のように見えたところは正六角形が対角線で折れ曲がった構造で、1:1:1:2の比で構成される台形が二つくっついた構造になっている。

絵だけではわかりにくいので、実際にモデリングして3Dプリンタで出力してみた。

下の写真が出力したもの。片方は記事中にあったような辺部分のみ形成したもの。うもう片方は面を埋めて出力したもの。面を埋めたほうは、辺部分の出力ミスで隙間が開いてしまったが、大体構造が理解できる。

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実はこの立体、正十二面体の各面の五角形の辺とその半分の長さとなる線分からなる台形を各辺に配置し中央が正五角形になるように出っ張らせたものとなる。正六角形状の部分が折れ曲がっているため、3つで頂点を共有しても立体構造になるのである。

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記事中では発見となっているが、この構造体、フラーレンとよばれる球状炭素分子の一種であるC80と同じ構造である。20世紀にはすでに発見されており、その対称性についても探せばいろいろと文献が見つかる。

記事中にあるもうひとつの立体はこれもフラーレンであるC140と呼ばれる構造体と同じであることがわかった。

記事中でスタン・シェイン博士は『ねじれ具合を調整し、面の数を増やすことで、対称性を持った立体は無数に作り出せる可能性がある』としているが、球状のフラーレンでC180,C240,C260があることがすでに知られている。

調べたらビーズでこの構造を作られている方のBlogがヒットした。

http://thebeadedmolecules.blogspot.jp/2007_04_01_archive.html

Tuesday,April 3,2007 Higher Fullerenes with I or Ih symmetry

の記事中に綺麗なビーズ球の写真を見ることが出来る。

 

かごめ編みやユニット折り紙で5角形部を6個つけたらかごが、12個で閉じる構造ができることは広く知られている。

下記のページがわかりやすく解説してくれている。

http://sky.geocities.jp/bunryu1011/fullerene.htm

 

世に知られて構造解析され、すでに実用化されている構造体を持ち出してきて、スタン・シェイン博士はいったい何を発見したのだろうか。数学の世界では別分野ですでに発見実用化されたものでも、数学界で発表されていなければ発見とみなされるのだろうか。疑問が残る。